シリーズ唯一、年上のマドンナである。
登場は、本編開始から44分12秒後。
名前は、綾(あや)
葛飾柴又では、名門で知れた「柳生家のお嬢様」である。
演じたのは、京マチ子
大阪出身。
1936年(昭和11年)に大阪松竹少女歌劇団(OSK)に入団
1949年(昭和24年)に大映から女優デビュー。
大柄で、官能的な肉体美を武器に数々の名作に出演。
黒澤明監督作品『羅生門』
溝口健二監督作品『雨月物語』
衣笠貞之助監督作品『地獄門』など、
海外の映画祭で主演作が次々と受賞し「グランプリ女優」と呼ばれた。
2000年に発表された『キネマ旬報』の「20世紀の映画スター・日本女優編」で、原節子、吉永小百合に次ぐ第3位に選ばれている。
3年ぶりに、綾は、柴又に戻ってくる。
幼少時代の寅次郎やさくらのことも知っていて、再会を喜ぶ。
長い入院生活を終えて退院した綾だが、それは、残された短い時間を慣れ親しんだ柴又で、静かに過ごすためだった。。
知っているのは、娘の雅子(檀ふみ)と、さくらだけ。
「遊びにいらしてね」
と言われ、綾の家に通い詰める寅さん。
それは、綾にとっても毎日の楽しみとなっていた。
最期は、突然訪れる。。
綾と住んでいた家を引き払う雅子が、寅さんにこう言う。
「誰にも愛されたことのない寂しい生涯だったけど、でもその最後に、たとえ一月でも、寅さんっていう人がそばにいてくれて、お母さまどんなに幸せだったか」
失意のうちに、旅に出る寅さん。
柴又駅のホームで、さくらに綾のことを話す寅さんの表情は、なぜか晴れ晴れとしていた。。。
この辺の描写は、なんとも言えない。
話は変わるが、寅さんが根津神社の境内で、当時、販売が禁止されていたクジラ尺の物差しを売っているシーンに、永六輔(えいろくすけ)が登場する。
台詞はない。
永六輔は、尺や貫など、日本古来の物の計り方を禁ずる法律「計量法」に猛反対した人物である。
ここで演じたのは、それを取り締まる側の警官。
だが、無言で立ち去る。
山田洋次監督ならではの演出である。