マドンナは、
というか、相棒と言っていいだろう。
ご存知、「リリー」
浅丘ルリ子である。
彼女の言葉は、、、まぁ容赦ない。
北海道の小樽で出会った、家出中の中年エリートサラリーマン。
昔の元カノに会いたがっている姿を見て、ひと言。
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いい年して甘ったれだね、男なんて!
だってそうじゃないかぁ。
30年前の男が現れて、どうのこうの言ったって女にしてみりゃ迷惑な話だよ。
陰気なおじさんのツラ見て、がっかりするだけじゃないの?
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かぶせて、
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幸せにしてやる?大きなお世話だ。
女が幸せになるには男の力を借りなきゃいけないとでも思ってるのかい?
笑わせないでよ!
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で、寅さんには、
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女がどうして可愛くなくちゃ、いけないんだい?
あんたそんなふうだから、年がら年中、女に振られてばっかりいるんだよ!
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極めつけは、「とらや」に戻った寅さんが、自分のメロンがないと、家族に大ギレしている姿を見て、
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ろくでなしのあんたをこんなに大事にしてくれる家がどこにあるかってんだ!
私、羨ましくて涙が出ちゃうよ。
本来ならね、いつもご心配おかけしております。
どうぞメロンをお召し上がりください。
私は要りませんから、私の分もどうぞ。
と、こういうのがほんとだろ!
甘ったれるのもいい加減にしやがれってんだ!
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あの寅さんにここまで言える女性は、この世にリリーただ一人である。
お兄ちゃんのお嫁さんになってくれる人は、リリーさんしかいない。
さくらは、そう思うのだが、、、
寅さん曰く、
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あいつは頭のいい、気性の強い、しっかりした女なんだよ。
俺みてえなバカとくっついて、幸せになれるわけがねえだろ。
あいつも俺と同じ渡り鳥よ。
腹すかせてさ、羽根怪我してさ、しばらくこの家に休んだまでのことだ。
いずれまたパッと羽ばたいてあの青い空へ……な、さくら、そういうことだろ?
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旅から旅へ、似た者同士には、恋心よりも、共感や同情、友情を抱く寅さん。
自分の事を本当に理解してくれる女性を、なぜか嫁にしない男。
シリーズの大きな流れを決定づける作品だったと言ってよいだろう。