おいちゃん役は、下條正巳
初代(森川信)、2代目(松村達雄)と比べるとシリアス気味なキャラクターだったが、
「普段は寅次郎に厳しく接しながらも、実は親代わりとして真剣に心配している」
という「おいちゃんの基本スタンス」を本作で確立させたと言える。
以降、おばちゃん役の三崎千恵子と共に、シリーズの最終回まで、超重要な役柄を見事に演じきった。
で、今回のマドンナは、看護師の京子。
十朱幸代である。
突然、寅さんが赤ん坊を背負って、葛飾柴又に戻ってくるという事件が発生。
それがきっかけで京子と出会う寅さん。
山形県米沢の出身。
1人前の看護師として、自立した人生を歩む京子は、
歴代マドンナと違い、悩みをかかえている訳でもなく、泣くこともない。
いつも元気で、笑っている。
寅さんの付け入るスキがないまま、ストーリーは進み、
結果、京子が趣味で通うコーラス教室の講師との仲をとりもってしまい、
あえなく失恋という展開である。
ところで本作では、
寅さんの旅先で、佐賀県唐津市の呼子漁港が、2度登場する。
そこで出会ったヌードダンサー(春川ますみ)との掛け合い。
「ここで踊ってんのかい?」
「こんな景色のよかとこまで来て、暗かところで女の裸ば見てどこがよかすかねぇ~」
「別に裸を見る訳じゃねえよ。姐さんの芸を見に来たと思えば腹もたたねえだろう」
「兄さん、よか事、言ってくれるね~」
同じような境遇の人間には、感心するほどの人情味。
皆から愛される寅さんの真骨頂である。