初っ端の旅先は、
島根県の 温泉津温泉(ゆのつおんせん)
温泉津港から山側に伸びる街並み。
鄙びた日本旅館が両側に立地する静かな温泉街である。
開湯は1300年前。
伝説では大狸が入浴しているところを発見されたと言われる。
戦国時代や江戸時代は石見銀山から産出される銀の積出港にもなったことから大いに栄えた場所である。
ところで、1時間35分20秒の本作中、この度、寅さんは、気の毒に2回も失恋してしまう。
男の恋愛は、だいたい勘違いから始まる。
温泉街で、出会った「お絹さん」
「こいつには、俺しか・・・」
「俺がそばにいてやらないと・・・」
その幻想がもとで、寅さんが結婚するという噂が、柴又中に広まった。
で、婚約者(?)が住む島根の港町にさくらとタコ社長が尋ねてみると、、、、、
誠に残念!という展開。
「ばかだね~、相変わらず・・。」
と言われながら、失恋直後の柴又に、
「寅さん、、わたし来ちゃった!」
と、歌子さん。
第9作のマドンナ
吉永小百合の再登場である。
一気に立ち直る寅さん。
奮闘努力の甲斐もなく、結局、想いは伝わらず。。
話は変わるが、歌子の父・高見修吉を演じた宮口精二について。
1931年(昭和6年)夜間学校を卒業後、福徳生命(現在のマニュライフ生命保険)に勤めていたが、
「同じ貧乏をするなら、自分の好きな道で」とのことで役者を志す。
うだつが上がらない時期が続いたが、
1951年(昭和26年)木下惠介監督の『善魔』に出演したのを皮切りに、
小津安二郎の『麦秋』
黒澤明監督の『生きる』『七人の侍』
木下監督の『楢山節考』
稲垣浩監督の『無法松の一生』 他多数
日本映画を代表する監督の作品に次々と起用された。
求められた役どころは、
痩身で寡黙だが凄腕の剣客
執念深い老刑事
不器用、仕事一筋で妻とも別れた小説家・・・
1983年、紫綬褒章を授与された。