本作品から、オープニングに「寅さん夢の中シーン」が、毎回差し込まれるようになった。
初回は、当時の人気ドラマ「木枯し紋次郎」のパロディ。
悪徳金貸しに脅される若夫婦(博とさくら)を長楊枝をくわえた寅さんがかっこよく助ける。
さくらが抱える赤ん坊に100万円の札束を持たせて、
「その坊やに飴玉のひとつでも・・・」
と、名乗りもせず立ち去っていく。
「おにいちゃん!」
なぜか、造り酒屋の前掛けをしたさくらが、泣きながら追いかけてくる。
目を覚ました場所は、石川県の片田舎、尾小屋鉄道かなひら駅の待合室だった。。。
記念すべき寅さんの初夢である。
今回は、ついに吉永小百合がマドンナ役として登場する。
純愛&青春映画路線の王道を歩む女優。
アクション路線がマンネリ化していた日活映画の救世主となる。
その実力は、本作でもいかんなく発揮された。
寅さんのとの出会いは、北陸路。
今回は、年が離れすぎていて、一目惚れではない。
だが、歌子(吉永小百合)は、
「寅さんお散歩に連れてって」
「寅さんに会いたい」
「寅さんに会えてよかった」
純心・無垢。
悪気なく、思わせぶりコメントを連発する。
惚れっぽい寅さんは、歌子ワールドに。
男が勘違いするパターンである。
で、失恋。
歌子は、愛知の陶芸家の元に嫁いでいく。
エンディング。
江戸川土手に、歌子くれた鈴をくくりつけたカバンが置かれている。
横で寝転がって肘をついている寅さん。
さくら
「幸せになれそうでよかったわね、歌子さん」
寅さん
「うん」
さくら
「どうして旅に出ちゃうの?」
寅さん
「ほら、見な、あんな雲になりてえんだよ・・・」
本心とは、真逆のコメントである。
ところで、
本作から、とらやのおいちゃん役は、松村達雄になった。
しゃがれた声の独得な台詞まわしが素敵である。