戦後、昭和の銀幕界を牽引した映画会社
大映
その看板女優で260以上の作品で主演を演じた若尾文子が、なんとライバル松竹の寅さんシリーズにマドンナとして登場した。
異種格闘技戦
今でいえば、石原さとみが、なんば花月の舞台に立つような話である。。。
これまで寅次郎の恋愛といえは、こっちが勝手に好きになり、想いが届かないまま失恋というパターンだったが。
今回のマドンナは気づく。
諦めてもらおうと、それとなく伝えても、寅さん全く気づかずという残念な展開。
若尾文子の美しさばかりが、強調される作品である。。。
が、
今回の主役は、ちょい役で親子と演じた
森繫久彌と宮本信子
だと思う。
舞台は、長崎県の五島
オープニング、長崎港で赤ん坊を抱えた絹代(宮本信子)に金を貸す寅さん。
五島列島の福江で、旅館を営む絹代の父親が森繫久彌である。
ダメ男から逃れて、赤ん坊と帰ってきた娘を追い返そうとする父親。
夫の元には二度と帰りたくないと号泣する絹代。
寅さん、父親の言い分を立てつつ、絹代を思いやる。
たった半日だけの出会いである。
それから、かくかくしかじか。
エンディングは正月。
絹代が夫と子供を連れて、柴又の「とらや」を訪れる。
失恋した寅さんは、もちろんいない。
五島の旅館で、電話がなる。
森繫
「あっ、絹代か…」
宮本
「今ね、東京から電話しとっとよ、いつか世話になった寅さんいうお宅でな、年賀状も出しとらんいうたら、かけろーって勧められて、父ちゃん、聞こえる?」
森繫
「はい、きこえる・・・」
宮本
「そいでねー、うちら二人同じ店に住み込んで、一生懸命働いとるけん、安心して。」
森繫
「・・・・」無言で涙。
宮本
「じゃ、電話代高こうなるけん、もう切るよ。体大事にな。」
宮本
「あー、肝心なこと忘れとった。とうちゃん、おめでとう。じゃ、さいなら。」
電話を切れても、森繁久彌は声を出さずに涙を流し続ける。
さりげないが、感動の名場面である。
その頃、寅さんは静岡県浜松の浜名湖ほとり
猪鼻湖神社
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御通行の皆様、新年あけましておめでとうございますように。
さてここに陳列されましたる幸せを呼ぶ鶴亀でございます。
鶴は千年、亀は万年、あなた百までわしゃ九十九(くじゅく)まで共にシラミのたかるまで・・・
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名調子で映画は終わる。
軽い。
が、深い。