1作目から、わずか2か月半後の公開である。
冒頭は、寅さんの夢の中。
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もしやあなたはお菊さんと申しませんか?
この顔に見覚えがございませんか?
おっかさぁ~~ん!
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蒸気機関車の轟音で目が覚めた場所は、三重県伊賀の拓植駅前。
旅館「小崎亭」の2階で、びっくりして飛び起きるシーンである。
「夢か~」
寝起きのながら物思いにふけった感じ。
オナラとかしながら。。
直後に、ファンファーレのような主題歌のイントロ。
で、例のアレ!
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わたくし~、生まれも育ちも葛飾柴又です。
帝釈天で産湯をつかい、
姓は車、名は寅次郎、
人呼んで・・・・
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この一連のパターンが、後のシリーズの十八番(おはこ)になった。
今回のマドンナは、夏子(佐藤オリエ)
1作目が冬子で、2作目は夏子。。。
だが、今回の主役は、他に2人いる。
夏子の父、坪内先生
と
生みの母親、お菊
である。
寅次郎が中退した、葛飾商業高校の元教師・坪内先生を演じたのは、東野英治郎。
1969年(昭和44年)から時代劇「水戸黄門」で徳川光圀を14年間、全381回に渡って演じた名優である。
博学で知性あふれる坪内先生は、半端な寅次郎のことを、なぜか気にかける。
真剣に叱ったり、ともに号泣したり。
随所に、東野栄次郎は、迫真の演技を見せた。
かたや、寅次郎の母、お菊は、京都の連れ込み宿(ラブホ)の女将である。
演じるのは、ミヤコ蝶々。
7歳から、芝居一座の座長を務め、舞踊、剣舞、バレエ、三味線等々、ありとあらゆる芸をもつ伝説の女役者である。
38年ぶりの寅次郎との再会シーン。
一瞬見せた喜びの表情を、すぐに押し殺す。
次に出たセリフは、
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今ごろ何の用事やねん。
あっ、銭か?
銭はあかんで、もう。
親子でも銭は関係あらへん!
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結局、大喧嘩で終わる。
山田洋次は、なぜこんな場面をつくったのか。
寅さんの直情型で、不器用で、面倒くさい性格は、母親譲りであることを描きたかったのだろう。。たぶん。
その後、夏子への恋も破れ、ラストシーンへ。
舞台は京都、三条大橋のたもと。
なぜか、寅次郎とお菊が二人で寄り添って、なにやら会話をしている。
二人とも仏頂面だが、なんだか幸せそうな光景である。
「ホラ、寅、もう寅、行くで!」
「細かいの、ちょっとくれよ」
「厚かましいな!何べんも何べんもこの子は…」
「いいじゃねえか、親子の間柄で」
「勝手なこと言うな、金の話はまた別じゃ」
「しみったれてるなあ、まったく~ よお、お母ちゃん!」
それを陰で見ていたのが、たまたま新婚旅行に来ていた夏子。
夏子のナレーションと、いつもの曲で第2作は終了する。
笑いどころ満載だが、中身の濃さといい、ひとつひとつの台詞の重みといい、他作品と比べて異作中の異作と言える。