博多駅前3丁目、こくてつ通り沿いのオフィスビル一角に「HERZ(ヘルツ)博多店」というお店がある。
ハンドメイドによる革鞄と革製品のショップである。
2007年の開業当初は、もっぱら制作や修理を行う工房として運営していたが、10年目となる昨年3月に全面改装、作り手の顔が見える店舗兼工房としてリニューアルオープンされた。
HERZ(ドイツ語でハート「心」)は1973年設立、本社を東京都渋谷区に構え、全国7カ所に直営店を運営している。
鞄は道具。
持ちやすく、使いやすく、飽きのこない丈夫なものがいい。
「丈夫で長く使える鞄」をテーマに、これまで400型を超える製品を生み出してきた。
で、本題。
ここでは、創業者・近藤晃理(あきまさ)氏が、創業当時に初めて手にしたミシンについて話してみたい。
革に魅了された近藤氏は、赤坂の半地下ガレージを工房兼デザイン事務所に改造、鞄作りを始めたが、肝心のミシンを持っていなかった。
その2年後、「浅草の鞄屋が店を閉めるんだけどミシンいらない?」と声がかかり、初めて革用ミシンが手に入った。
それが、「シンガー5K」という機種だった。
元々、ミシンは約400年前に産業革命の時代にイギリスで発明されたもの。
当初は、軍服の製造などに用いられていたが、品質が安定せず量産には至らなかった。
それを進化させ、現在とほぼ同じ構造のミシンを発明したのが、アメリカのアイザック・メリット・シンガーである。
1850年のこと。
ちなみに、ミシンが初めて日本へやって来たのは1854年。
あのぺリー提督が徳川将軍家に献上した物が第1号である。
そう、天璋院篤姫が最初の日本人として扱ったミシンはシンガー製なのだ。
以降、年ごとの改良と大量生産で、世界中に普及、160余年を経て、最も知られるミシンブランドとなった。
で、近藤氏が手に入れた「5K」というのは、1902年ニュージャージー州のエリザベス工場で製造された年代物で、シンガー製の中でも特に極厚物用のミシンだった。
偶然にも、当初から望んでいた厚い革の加工にはぴったりの製品だったのである。
まさしく運命の出会い。
以来、HERZとの最大の特徴である「厚い革と太い糸」原型が今でも定番商品として作り続けられている。
めでたし、めでたし。
なんかさー、昔の機械ってかっちょいいよね~
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